今回はセラミックスの弾性率について説明します。構造体の材料としてセラミックスを用いる際は、弾性率は一つの重要なパラメータです。弾性率を正確に測定し、材料の使用限界を正確に把握できるようにしましょう。
弾性率
弾性率はEで表し、弾性応力と弾性ひずみとの間の比例定数として使われます。そのため、弾性率Eは単位弾性ひずみεを生ずるのに必要な応力であると考えることができます。$$E=\frac{σ}{ε}$$
引張り応力下では応力が増加すると原子間距離も大きくなります。原子間の結合が強い材料ほど原子を引き離すのに必要な応力が増加し、弾性率の値が大きくなります。代表的なセラミックス、金属、及び有機材料の弾性率の値を表1に示します。
弾性率の値は結晶の方向によって異なるため、単結晶を扱う際には異方性を考慮する必要があります。ほとんどのセラミックスは多結晶材料であるため、それらの材料は全ての方向に均一な弾性率を持っています。しかしながら、多結晶セラミックスにおける個々の微細な結晶は非等方性であるため、材料を応用する際に影響する場合もあります。
一般的に全ての材料で温度の上昇とともに弾性率はわずかに減少します。これは熱膨張によって原子間距離が増加し、原子を引き離すのに要する力が減少することに起因します。
表1 各種材料の室温での弾性率
材料 | 平均弾性率E(GPa) |
ナイロン | 2.8 |
コンクリート | 13.8 |
NaCl | 44.2 |
ガラス | 69 |
ZrO2 | 138 |
ムライト | 145 |
鉄 | 197 |
MgO | 207 |
Si3N4 | 304 |
Al2O3 | 380 |
SiC | 414 |
弾性率の測定
弾性率の測定には二つの方法があります。ひとつは、ひずみを応力の関数として直接測定してグラフに書き、応力-ひずみ関係の弾性領域の傾きを求める方法です。この方法は室温ではひずみゲージを使って正確に測定できますが、ひずみゲージの信頼性がなくなる方法は高温度では使えません。引張り強度試験の応力-変位曲線から弾性率を計算することも可能であるが、測定した応力変位曲線が応力印加装置や測定記録系の変形や遊びなどの影響を含むため、信用するには注意が必要です。
第2の方法は、材料の共鳴振動数の測定に基礎をおいて、次の式からEの値を計算する方法です。$$E=CMf^2$$
ここでCは試料片の寸法と形状及びポアソン比で決まる定数で、Mは試料片の質量、fは横振動(曲げ振動)モードの基本振動数です。この方法は全ての温度範囲で、単結晶のそれぞれの軸方向の弾性率と多結晶材料の平均弾性率を正確に測定することができます。
ポアソン比
引張り応力が加えられると材料は長さが増加して厚さが若干減少します。長さの増加に対する厚さの減少の割り合いをポアソン比と呼び、次の式で表します。$$ν=−\frac{Δd/d}{Δl/l}$$
種々の材料の室温におけるポアソン比の値を表2に示します。等方性結晶体や多結晶セラミックスでは、ポアソン比、ヤング率及び剛性率の間には次の関係があります。$$E=2G(1+ν)$$
表2 各種材料のポアソン比(室温)
材料 | ポアソン比 |
SiC | 0.14 |
SiO2 | 0.25 |
Al2O3 | 0.26 |
MgO | 0.36 |
BeO | 0.34 |
金属系 | およそ0.33 |
コンクリート | 0.24 |
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