セラミックの電気的性質〜半導体と絶縁体〜

セラミック
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今回はセラミック材料の半導体と絶縁体について説明します。セラミック材料はその電気的性質のため、半導体や絶縁体として広く様々な製品に用いられています。

半導体

半導体とは絶縁体と導体の中間の電気伝導度を持つ物質のことをいいますが、その性質も種類も様々あります。

電子にはとることのできるエネルギー準位があり、それが集まったときにできる帯状の準位のことをエネルギーバンドといいます。CoO, NiO, Cu2O, Fe2O3 などの材料は電子の入ったエネルギーバンドと空のエネルギーバンドとの間にギャップを持っています。そのギャップに対して、外部からエネルギーが与えられてギャップの間に何らかの橋渡しができる場合に伝導を生じます。

NiO, FeO, 及び CoOは低温では10-16 S/cm 以下の電気伝導度をもつ絶縁体になりますが、250~1000 Kの範囲では電気伝導度がほぼ直線的に増加し、1000Kでは 10-4~10-2 S/cm 程度の値をもつ半導体(semiconductor)になります。

多くのセラミックでは不純物のドープや不定比性によって半導性を生じます。具体的な材料としては TiO2, ZnO, CdS, BaTiO3, Cr203, SiC などがあります。近年では、半導性をもつセラミックスは非常に多くの製品に用いられています。例えば、Cu2Oは交流を直流に変換する整流器に使われています。また、半導性を持つスピネル型化合物(Fe304など)に、絶縁性を持つスピネル型化合物 (MgAl204, MgCr204, Zn2TiO4など)を固溶させて特性を上手く制御した材料は、サーミスター等に用いられています。また、SiC に不純物をドープした半導体材料は抵抗加熱素子として広く使われています。SiCの比抵抗と断面積を上手に選択することにより、室温から1500℃までの温度帯で様々な用途に使用することができます。大型のヒーターは工業用の電気炉に、小型のガス点火器は衣類乾燥器やガスコンロの口火の代りに使われています。

さらに、導電性のない材料に導電性や半導性を持った材料を混合することによって、他の性質をそれほど変化させることなく半導性を制御することも可能です。例えば、Si3N4などは、SiCを加えることで抵抗値が大きく変わります。Si3N4に40%のSiCを加えることで、導電率は1010程度まで上昇します。

絶縁体

https://konju-ceramic.com/electrical-property-1/でも説明しましたが、ほとんどの純粋な酸化物や珪酸塩セラミックスは優れた絶縁体 (insulator) です。セラミックはその絶縁性と化学的に不活性で高温でも安定的な特性から多くの製品で使用されています。しかしながら、同じ絶縁体でも用途が違えば要求される性質も異なります。

たとえば、電子部品や回路を取り付ける基板はかなりの強度と化学的安定性、高い電気抵抗度が必要になりますが、それと同時に高い熱伝導度と優れた表面平滑度も必要になります。常温であればセラミック材料以外を用いることも可能ですが、250°C以上の温度では多くの高分子材料は使用不能になりますし、ガラスの中にも組成変化を生じてしまうものもあります。それに対して、Al2O3(アルミナ)は優れた耐熱性を持ちながら高い熱伝導性も備えているため、回路部品から発生する熱を効果的に除去することができます(Al2O3の熱伝導度はガラスのおよそ25 倍)。また、Al2O3は加工のしやすさでも有効的です。回路基板は表面平滑度に対する要求が非常に厳しいため、表面の不均一性が250Å程度でも動作不良の原因となってしまいます。そのため、切断のしやすさや研磨のしやすさ等も、Al2O3が使用される理由の一つとなっています。

セラミックは絶縁性を利用して高圧電力用の碍子にも使われています。碍子といって馴染みがない人には伝わりにくいかもしれませんが、電柱の上、電線の付近に付いている白い塊が碍子で、電線を電柱に絶縁固定するために使われています。一見するとただ絶縁体であれば良いようにも思われますが、実は要求される性能は非常に厳しいものになります。高圧碍子は鉄塔間に張られた導線の重量を支えつつ、強風の中での応力に耐える十分な強度をもっていなければいけません。さらに、雨や雪、気温の激変に耐えて長期間使用するものですので、非堂に高い信頼性、耐久性が要求されます。

自動車のエンジンに使用されているスパークプラグにもセラミックの絶縁材料は使用されています。スパークプラグには数千Vの電圧が毎秒 20〜50 回繰り返し印加されます。その印加の際には約10 MPa の圧力パルスと2400°Cの燃焼温度からの熱放射を受けるため、非常に高い耐久性が必要になります。スパークプラグの絶縁体は高アルミナ質磁器でつくられており、非常に高い電気抵抗をもっています。

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