今回はセラミック材料の焼結過程のひとつ、液相焼結について説明します。液相焼結はセラミック材料を緻密化させるために非常に重要な技術です。平衡状態図を使いこなせるようになりましょう。
液相焼結
液相焼結 (liquid-phase sintering) は、焼結温度で粘性のある液体が存在する焼結機構のことをいいます。珪酸塩系のほとんどの材料は緻密化に液相焼結を用い、焼結温度で液体が固体粒子を完全に濡らすことで焼結を容易に進行させます。
粒子間の狭い部分に液体が入ることで大きな毛管圧が生じ、いくつかの機構によって緻密化が促進されます。以下にその機構を示します。以下の機構により蒸気相輸送と粒成長の速度が増加し、焼結が促進します。
- 粒子が再配列による充境性の向上
- 粒子間の接触圧力の増加
- 溶解・析出による物質移動
- クリープ、塑性変形
珪酸塩系の液体によって生じる毛管圧は7MPa以上になることがあります。小さな粒子では大きな粒子に比べて毛管圧が高く曲率が小さいため表面エネルギーが大きく、緻密化の駆動力が大きくなります。気孔率が小さい高強度の材料は、一般的に平均粒径が5μm以下で比表面積が5 m2/g以上ある粉末を原料としています。
液相焼結の速度は温度によっても大きく変わります。それは、温度が少し上昇するだけで液体の量が著しく増加することに起因しています。緻密化速度が増加するため有利な点もありますが、過度の粒成長が生じて強度が低下したり材料の変形を生じてしまうなど不利な点も存在します。
ある温度で存在する液体の量は平衡状態図(phase equilibrium diagram)から予測することができます。今回は平衡状態図の原理について簡単に説明します。これを使用することで温度と液相量との関係や焼結の最適組成と温度との関係を予測することができます。
二元系共晶型の状態図
簡単な二元系共晶型(binary eutectic phase)の状態図を以下に示します。この図からいくつかの知見を得ることができます。
- 純粋成分AおよびBの融点は TA と TB である。
- AにBを加えると融点が下がる。
- この系における最低の融点、すなわち共晶温度 Te は A:30%, B:70%の組成で得られる。
- 系が平衡状態にあるとき、固相、液相、及び混合物が存在する温度と組成の範囲がわかる。
反応性液相焼結
反応性液相焼結(reactive liquid sintering, transient liquid sintering)では、焼結する際には液相が存在して緻密化が起こりますが、焼結が進むと液相の組成が変化し液相が反応で消費されます。そのため、得られる材料は良好な高温特性をもち、場合によっては焼結温度以上の温度で使用することができます。
反応性液相焼結を行うためにいくつかのパターンがあります。以下にそのパターンを示します。
- 出発物質と添加物が反応し、その過程で液相の中間化合物が生成しながら最終的に安定な固体化合物が生成する材料系
- 平衡状態では固溶体を生成するが平衡前に液体をつくる材料系
- 液相焼結した材料を冷却して粒界にガラス相をつくり、ガラス相を結晶化するため再度熱処理を行う方法
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