リチウムイオン電池の正極材料〜ニッケル酸リチウム〜

ニッケル酸リチウム 電気化学
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今回は、リチウムイオン電池の正極材料としてニッケル酸リチウム LiNiO2について説明します。LiNiO2はLiCoO2と同様の結晶構造であり、同じようにLiイオンに対してトポケミカル反応を行います。近年、ニッケル系の正極材料はコバルト系の代替材として活発に研究が行われています。

ニッケル酸リチウムの開発背景

LiCoO2についてhttps://konju-ceramic.com/lithium-cobalt-oxide/にて説明しましたが、その代替材料として古くから研究が進められてきた正極材料がLiNiO2です。LiNiO2はLiCoO2と同じ層状岩塩型結晶構造であるため、LiCoO2と同等の特性を期待することができます。ニッケルを用いることでコバルトよりは電位はわずかに低下してしまいますが、理論容量はLiCoO2と同程度(分子量がLiCoO2より小さいため理論容量はわずかに上)あり、利用可能な充放電容量もおよそ1.2倍程度まで大きくなります(リチウムイオンの脱離挿入が0.7程度まで可能です)。 さらに、ニッケルがコバルトと比べて安価で埋蔵量も多いことも開発が進められている理由の一つです。(近年ニッケルは燃料電池分野での需要から高騰しつつはありますが。。。)

正極材料としてのニッケル酸リチウム

以上の理由からLiNiO2は代替材料として最適であると考えられますが、原料合成の工程で解決すべき問題があります。LiNiO2では電気化学的活性なニッケルイオンは3価で存在しますが、合成時に2価のNi2+に還元されやすく、本来リチウムイオンが存在するべきサイトにNi2+が入り込んだリチウム含有量が不足した Li1-xNi1+xO2を生成してしまいます。この組成では、リチウムイオンの拡散性が低下したりサイクル特性の劣化が起こりやすくなってしまいます。そのため、十分な酸素雰囲気下での組成を得る合成方法が必要になりLiCoO2ほど簡便に合成する手法は確立されていません。そのため、出発原料の選択や雰囲気制御を行うなどの幅広い開発により、固相法だけでなくペッチーニ法、ゾル-ゲル法など多くの合成法が検討されています。

また、LiNiO2からLiが脱離する際にNiがLi位置へ移動してしまったり、Liが多い場合にはNi位置を占有してしまうことなども確認されており、充放電特性に影響を与えてしまうことがわかっています。さらに、熱安定性も大きな問題であり、分解反応とそれに伴う酸素温度がLiCoO2に比べて50℃程度も低下してしまいます。これは安全性の面から考えると大きな懸念点となっています。

LiNiO2はLiCoO2の代替材料として長い期間研究されていますが、上記のような問題から実用化には至っている例は少なく、LiNiO2単独で使用するのは難しいともされています。また、上記したような燃料電池での需要やステンレス鋼の需要増加によるニッケルの価格高騰などもあり、LiNiO2の実用化にはコスト面でも検討することが必要になってきています。このような観点から、LiNiO2やLiCoO2が完全固溶体を形成することに注目して、固溶体である LiNi1-xCoxO2の研究が進められている。この固溶体LiNi1-xCoxO2はニッケルとコバルトの割合で充放電特性が変化します。特に注目されている材料はLiNi0.8Co0.2O2であり、この材料ではコバルトの効果でLiNiO2のような充放電過程での結晶構造の変化は見られず、安定なサイクル特性を示します。また、コバルトイオンではなくマンガンイオンで置換したLiNi1-xMnxO2や表面被覆に関しても研究が行われています。

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