セラミックの光学的性質〜屈折率〜

セラミックの光学的性質 セラミック
Sponsored Links

今回はセラミックの光学的性質の中で、屈折率について説明します。お風呂で水面下の手足の指が短く見えたりする現象が屈折率です。そんな身近な物理現象ですが、現代の情報通信技術に必須の光ファイバーに利用されていて、工業的に非常に重要な分野となっています。

屈折率

屈折率の基本原理

光は物質中の電子と相互作用します。透明な物質では相互作用の程度は物質によって差があり、光の速度は真空中の速度に比べて遅くなります。屈折率 (index of refraction)は、物質中での光の速度に対する真空中での光の速度と定義されます。$$η=\frac{v_{真空}}{v_{物質}}$$

屈折率は入射する光の波長によって変化します。これを分散(dispersion)と呼び、通常は波長が短くなるほどηが増加します。したがって、違う材料の屈折率を比較するときには測定波長が同じであるか、分散曲線の補正が可能であることを確める必要があります。

ある物質から他の物質へ光が入る際の速度の変化が光を曲げる原因です。これを屈折と呼び、水中を泳ぐ魚が実際の位置とは違うところにいるように見える効果を示します。空気中に置かれた屈折率ηの物体に光を照射したとき、図1の入射角iと屈折角rとの間には次の関係があります。

$$\sin r=\frac{\sin i}{η}$$

上の式は光子機器を設計する際に広く使われています。例えばレンズの補正(適当な大きさの像が予定の焦点面に現れることの確認)などに用いられています。また工学分野以外でも特別な効果を出すことにも使われており、婚約指輪に使われるダイヤモンドなどその物質の色や輝きを最高にする角度にカットされています。

光ファイバーへの応用

しかしながら、屈折率の最も重要な応用技術はやはり光ファイバーでしょう。光通信ではレーザーのコヒーレントな光をできるだけ損失することなく長距離伝送する必要があるため、光が全反射するように屈折率と屈折角を選択します。図2で光が左側からファイバーに入ったとして、ファイバーの長さ方向と平行に反射する内部角を計算すると i = 90°のときに角rの最小値(臨界角)が得られ、次の式が成立します。

$$\sin r_{臨界}=\frac{\sin i}{η}=\frac{1}{η}$$

普通のガラス(η≈1.5)ではr臨界の値は約42°で、これより大きいすべての角度で内部全反射が起きます。この全反射の臨界角は比較的小さいので、ファイバーが曲がっているところでも損失なしに光を伝送することができます。

https://konju-ceramic.com/optical-property-1/にて説明しましたが、透明な物質中での光の損失は内部欠陥、介在物および不均一性による吸収や散乱によって生じます。光ファイバーでは、表面にある傷や油脂、塵などが散乱や全反射の臨界角を変化させる原因となります。それらの損失を避けるために、光ファイバーを低屈折率のガラスで囲むことが行われています。また、イオン交換法でファイバーの表面から内部へ屈折率の勾配をつける方法もあります。これによって、光はファイバーの軸に沿って正弦関数形の経路を通って進行していきます。

屈折率
図1 入射光と屈折光
図2 光ファイバー

コメント

タイトルとURLをコピーしました