窒化ケイ素と炭化ケイ素の酸化反応

酸化反応 セラミック
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セラミックスは金属の使用不可能な過酷な環境でよく使われます。そのような環境で欠陥が成長することなく使用し続けるために、温度や時間がセラミックス材料に与える影響を理解することは非常に重要です。今回はSi3N4とSiCの酸化反応について説明します。

Si3N4とSiCの酸化反応

セラミックス材料は高温の酸化雰囲気でよく使用されます。酸化物や珪酸塩は一般にそのような条件下で安定ですが、炭化物、窒化物、ほう化物の多くは安定ではありません。特に、Si3N4とSiCはセラミック製品によく使用されるため、特性を理解することは重要です。

一般的に、高温ではSi3N4とSiCの表面は酸素と反応します。雰囲気の酸素分圧が1mmHg以上の場合には表面にSiO2の保護膜を形成します。これは不働態酸化(passive oxidation) と呼ばれています。SiO2皮膜の生成反応は初期には速く進みますが、厚みが増すにつれ遅くなっていきます。そのような条件下では酸化はSiO2層を通しての酸素拡散で律速されるため、放物線的になります。

一方で、1mmHg 以下の低酸素分圧下で加熱すると、SiO2保護膜を形成するのに十分な酸素が存在しないため気体のSiOが生成します。これは活性酸化(active oxidation) と呼ばれており、ほとんど直線的、かつ連続的に材料の全部が消費されるまで進行します。そのため、活性酸化が起こる条件は注意する必要があります。

熱機関等へこれらの材料を用いる際に重要なのは材料強度に及ぼす酸化の影響です。種類、温度、初めの表面状態により、その影響に大きな差が現れてきます。例えば、ホットプレスにより作製されたSi3N4材料では、研摩傷が試料の長さ方向に平行な材料の強度は、垂直な材料の強度に比べて著しく大きくなります。また、1000℃程度の低温酸化は研摩傷の鋭さを減少させる効果があり、試料の長さ方向に垂直な研摩傷のある試料の強度を著しく増加させます。高温酸化では研摩傷を完全に除去できますが、表面にピットを生成して研摩傷と同程度、もしくはさらに悪い影響を強度に及ぼしてしまいます。

Si3N4中にMg, Fe, Caなどの不純物が存在するとSiO2被膜と反応して、純粋なSiO2と比べ融点と粘度が著しく低く酸素の拡散速度が異なる複雑な化合物を生成します。この化合物はSi3N4の酸化を促進し、ある程度Si3N4を溶解して化学腐食を生じてしまう可能性があります。

また、Si3N4の純度を向上したり、MgO以外の焼結助剤(たとえばY2O3, CeO2, BeSiN2)を使うことで耐酸化性を向上することも可能です。

反応焼結Si3N4

反応焼結Si3N4の強度も高温酸化によって著しい影響を受けてしまいます。反応焼結Si3N4は焼結助剤は含みませんが、そのかわりに15〜25 % の気孔が存在します。連続した気孔を含むこの材料を加熱すると、気孔に沿って酸化が起こりクリストバライトや無定形シリカを生成します。反応の初期には欠陥のなまし効果によって強度が若干増加しますが、長時間の酸化ではかなりの量のSiO2が生成し強度が低下します(1250℃, 250℃の酸化で30%の強度低下という報告もあります)。強度低下の原因はSi3N4が反応して弱いSiO2を生成することと、生成したクリストバライトや無定形シリカの熱膨張や弾性的性質がSi3N4と異なるためであると考えられています。クリストバライトが250℃で高温型から低温型に変位型の相転移をする際には約5% の収縮を生じ亀裂の原因ともなりえます。

低い気孔率、もしくは微細な気孔を持つ反応焼結Si3N4の特性は、酸化状態を制御することによって向上させることが可能です。例えば、 1300℃以上の温度で急速に酸化させると表面に密着した酸化物層が生成して内部を酸化から保護することができます。このような処理で常に強度が増加するとは限りませんが、高温酸化雰囲気での長期間の安定性は多くの場合で著しく向上します。

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