シュレディンガーの猫

シュレディンガーの猫 思考実験
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物理学では最も有名な思考実験ではないでしょうか。シュレディンガーの猫は生きているのか、死んでいるのか。量子力学ってありえないよね、ということをエルヴィン・シュレディンガーが1935年に投げかけた理論上の問題ですが、皮肉なことに現代では量子力学の入りの説明として最もよく使われています。

古典力学と量子力学

17世紀にニュートンが提唱した運動方程式を基にした力学を『古典力学』といい、20世紀にシュレディンガーを始めとしてハイゼンベルク、ボーア、ボルンらによって構成された力学を『量子力学』といいます。

19世紀までは古典力学の考え方である「最初の条件さえ決まれば、その後の物質の状態や運動はすべて確定する」という決定論に従い、物理学は発展してきました。しかし、1926年にシュレディンガーが波動方程式によって量子の状態を確率的に定めることができる数式を発見しました。この確率的に予想するという考え方は当時の決定論に反していたため、当時物理学にとても大きな衝撃を与えました。一方で、シュレディンガー自身はというと、今までの決定論的な考え方でいずれは量子の状態を予想することができ、自身が発表した波動方程式は途上のものだと考えていました。

しかしながら、1927年にボーア、ハイゼンベルク、ボルンらはコペンハーゲン解釈を発表します。これらはシュレディンガーが創設した量子力学を補完する理論であり、後に大勢の物理学者や数学者が量子力学の追求に励むきっかけとなった理論になります。その中の一つ「量子重ね合わせ」という理論が、今回のシュレディンガーの猫の主題です。これは粒子や光子は、同時に2つの状態をとることが可能であり、どちらの状態になっているかを知ることができないという理論です。量子重ね合わせでは、実際に観測してどちらの状態になっているかを確認するまで、粒子は同時に2つの状態を維持しており、観測が行われた時点でどちらか一方の状態に固定されます。つまり、観測者のみが粒子をいずれかの状態に固定できるということです。シュレディンガーは量子力学の扉を開いた第一人者でありますが、この理論が気に入らず、思考実験としてパラドックスを提示しました。

シュレディンガーの猫

1匹の猫が鋼鉄製の密閉された箱の中に入れられており、その猫の脱出手段はないとします。箱の中には少量の放射性物質を扱う装置、放射線検知器、青酸の入った瓶があります。さらに、放射性物質の原子がひとつ崩壊すると放射線検知器が作動し、それに連動してハンマーが瓶を叩き割るという連動装置が箱にあるとします。つまり、箱の中の放射性物質が崩壊すると瓶から毒ガスが放出され猫が死んでしまう、という作りになっています。

放射性原子というのはいつ崩壊するのかは全く予測できません。1秒後なのか1分後なのか1時間後なのか1日後なのかはわからないのです。そのため、箱の中を見ない限り5分後に原子が崩壊しているかどうかすらもわかりません。ハイゼンベルクらの「量子重ね合わせ理論」では、この放射性原子が崩壊していない状態と崩壊している状態の両方を兼ねている、ということを言っています。つまり、観測者が箱の中を覗くまで、猫が生きながら死んでいるということになります。こんなことはあり得るのでしょうか。この点をシュレディンガーは指摘しました。重ね合わせ理論を現実世界に持ち込むと、不合理な結論が導かれてしまいます。

観測者の重要性

この思考実験を聞き、一部の人々は猫こそが観測者だと言い出しました。猫が生きているうちは、原子の崩壊の状態を知っているというのです。放射性検知器自身が観測者だと考える学者もいました。猫の生死を決めたのは放射性検知器だという考えです。

アルベルト・アインシュタインは量子力学に否定的でした。実際に1950年にシュレディンガーに手紙を書き、この思考実験を絶賛しています。猫の生死と観測者が関係している訳がない、という内容でした。

『神はサイコロを振らない』

アインシュタインの有名な言葉です。アインシュタインは、完全な物理学理論は決定論的である、という信念を持っていました。アインシュタインの信念に反して、量子力学はその後世界を席巻していきます。『シュレディンガーの猫』は今日でも議論が続いており、世界的にも有名になりました。物理学者の中では、猫を見るとまず量子力学が思い浮かびます。

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