18世紀の科学

18世紀の科学 物理学
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17世紀はニュートン力学という理論体系の誕生によって物理学が大きく進歩した時代となりましたが、18世紀は『化学』という分野が産声をあげることになる時代です。

化学の始まり

18世紀初頭、未だ物質は「土、水、空気、火」という4つの基本元素からなると考えられており、なにかしらの化学操作によってこの4元素の相互変換が可能ではないか、という考え方も残っていました。ニュートンが晩年錬金術の研究に没頭したということからも、4元素の相互変換を夢見る意識が根強く残っていたことを思わせます。

しかしながら、18世紀後半に入ると、少しずつその物質観に変化が生じてきます。きっかけとなるのはキャベンディッシュによる水素、シェーレによる酸素、ダニエル・ラザフォードによる窒素の発見です。彼らは金属に酸をかけたり加熱したりすることで酸素、水素を、密閉容器中で燃焼させ続けることで窒素を発見しました。17世紀の地動説のようにすぐにその元素観が覆ることはありませんでしたが、今まで基本元素だと思われていた空気がさらに分解可能であること示唆されはじめ、少しずつ変化の兆しが見えはじめてきます。

また、18世紀では定量的な実験が行われるようになり、反応の際の物質の質量変化の測定が導入されるようになりました。これを利用して、ラヴォアジエは新しい燃焼理論を確立します。それまでは、金属を加熱することでその金属に変化がみられることは、燃素と呼ばれるフロギストンが金属から抜け出しているためだと考えられていました。しかしながら、定量的な実験として加熱前後でその質量を測ると、加熱後の方が重くなっていることが発見されました。さらに、ラヴォアジエは金属の増加した質量が減少した空気の質量と同じになることを明らかにしました。つまり、燃焼とは物質からフロギストンが抜け出る現象ではなく、空気の一成分と物質の結合であることを示したのです。

さらにラヴォアジエは、「化学反応の前後で、関与した物質の質量の総量は変わらない」という法則を『化学原論』の中で提唱します(1789年)。ラヴォアジエはそこで科学的分析を通して究極的に到達できる物質の構成要素を元素と定義しています。そして、その定義に基づいた元素を33種列挙しました。その中には少し間違いもありましたが、新しく定義した元素を基本単位にして、化学反応を定量的に捉える物質観がここに提唱され、19世紀の化学の発展に繋がっていくことになります。

ニュートン力学の発展

17世紀に誕生したニュートン力学ですが、18世紀にはヨーロッパ全土にわたって発展し、近代科学の規範とみなされるようになっていきます。それは、ハレーによる彗星の回帰予測、パリ王立科学アカデミーによる地球の測量など、数々の実験結果がニュートン力学の妥当性を証明したからです。これほどまでに実証性も予知能力も高い理論体系を作り上がったのは、その道具として使われた解析学の進歩のおかげでもありました。ニュートン力学としては、問題となる事象を微分方程式で描いてしまえば、後は解析するだけで答えが出てくる、というものでしたので、解析学の進歩がそのまま力学の精密性に直結します。フランスのラグランジュやラプラスは、その発展の礎となった数学者の一人です。1788年にラグランジュが著す『解析力学』、1799年から刊行が始まる『天体力学』は、微分積分法をさらに発展させる一端となりました。

電気と熱の研究

18世紀では、少しずつですが電気と熱の研究も注目されはじめます。

摩擦によって電気が発生する現象は古くから知られていましたが、18世紀半ばにその発生した電気を貯める「ライデンびん」と呼ばれる装置が開発されます。その後、18世紀の終わり、1799年にイタリアのボルタによって電池が発明されます。電池が作られたことにより初めて、人類は電気を長時間、継続的に得られるようになりました。

その結果、電気に関する実験が飛躍的に広がっていき、19世紀に誕生する電磁気学の礎が出来上がっていきます。また1800年には「電気分解」という実験手法が考案され、19世紀の新元素の発見に大きく貢献していくことになります。

18世紀、熱の正体は「カロリック(熱素)」と呼ばれる元素とみなされており、カロリックの移動が熱の流れと考えられていました。18世紀の後半には、イギリスのブラックによる、熱容量や潜熱といった現在でも使われる概念が導入されますが、それも全てカロリックを前提として論じられていました。

これに対し、摩擦による熱の発生はカロリック説では説明がつかない、と考えたのがランフォードでした。そこでランフォードは、物質粒子の運動こそが熱の正体である、という新しい説を発表します(1798年)。この論争は19世紀半ばまで続くこととなりますが、やがてカロリック説は否定され、熱力学の確立へと繋がっていくこととなります。

このように、17世紀の流れから力学が一頭地を抜く存在となっていく一方で、電気や熱の研究などの19世紀により発展していく新しい分野の芽が出始めるのが、18世紀の科学史となります。

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