セラミックの物理的性質〜密度、融点〜

セラミック
Sponsored Links

今回はセラミック材料の物理的性質の中から、密度、融点について説明します。セラミック材料の中には多孔体のような理論密度とかさ密度に大きな差があるものもあるため、密度の意味合いや測定方法を正しく理解することは非常に重要です。また、密度自体が製品性能に直結したり製品強度に与える影響も大きいため、正確な管理や制御も必要になります。

密度

密度(density)は単位体積あたりの質量を表す尺度で、表現によって意味がいくつかに分かれます。

結晶学的密度(理論密度)

結晶学的密度(crystallographic density)、理論密度(theoretical density)は、ある組成と結晶構造をもつ物質について測定した格子定数と、単位格子に含まれるすべての原子の原子量から計算して得られる密度です。材料中に含まれる欠陥は考慮しません。

比重

比重(specific gravity)は、ある温度においてある体積を占める物質の質量と、それと同体積の標準物質(通常は 4°Cの水)の質量との比になります。無次元量で単位はありません。

かさ密度

かさ密度(bulk density)は、気孔や欠陥を含む現実の材料について測定したみかけの密度です。セラミックではアルキメデス法によって測定されます。

物質の密度は、それを構成する元素の大きさと原子量および充填の具合によって決まります。そのため、原子量の小さい元素から構成される物質の密度は小さく、反対に原子量の大きい元素から構成される物質の密度は大きくなります。例えば、炭化タングステン(WC)の密度は炭化ケイ素(SiC)の密度の5倍です。また、有機物はC, H, CI, Fなど原子量の小さい元素から成り、いずれも低密度の化合物になります。高温型の結晶多形は低温型の結晶多形よりも一般に低い密度になります。また、ガラスの密度は同じ組成での結晶化した構造の密度よりも低くなります。

材料のかさ密度はいくつかの方法で求めることができます。材料が簡単な形状である場合は、かさ密度は寸法を測定して体積を計算し、これを乾燥重量で割ることによって求められます。例えば、円柱のかさ密度は、

$$B=\frac{D}{πr^2h}$$で表されます。(B:かさ密度、D:重量、r:半径、h:高さ)

複雑な形状の場合、かさ密度はアルキメデスの原理を用い、空気中で測定した重量と水中に吊して測定した重量から計算します。その際に気孔を含まない物体はそのまま水中に吊して差支えありませんが、気孔を含む材料では特別な測定方法を行います。まず、空気中で物体の乾燥重量Dを測定した後に、これを水に入れて5時間煮沸して水中に24時間放置します。この物体を水の中に吊して測定した重量Sと、濡れた物体を空気中で測定したときの重量W を測定します。すると、水の密度をρとしたときに以下の関係が得られます。

(乾燥重量:D 水中重量:S 含水重量:W 水の密度:ρ 物質の体積:V1 気孔の体積:V2

$$みかけの体積:V=\frac{W−S}{ρ}$$$$(S=D−ρV_1, W=D+ρV_2, W−S=ρ(V_1+V_2)=ρV)$$$$かさ密度:B=\frac{D}{V}$$$$みかけの気孔率:P=\frac{V_2}{V}=\frac{W−D}{W−S}$$$$水を通さない部分の体積:I=\frac{D−S}{ρ}$$$$みかけの密度:T=\frac{D}{I}=\frac{ρD}{D−S}$$$$吸水率:A=\frac{ρV_2}{D}=\frac{W−D}{D}$$

測定物への水の含浸は煮沸でも良いですが、真空引きでも行うことができます。気孔全てにしっかり含浸させる条件は、実験にて決定することで測定精度が高まります。

セラミック材料のキャラクタリゼーションにはかさ密度の測定が重要で、気孔の量や分布は材料の強度、弾性率、耐酸化性、耐摩耗性などに大きな影響を及ぼすことが知られています。

融点

セラミックは材料の融点が高いというメリットをよく使われますが、すべてのセラミックスの融点が高いわけではありません。例えば、B2O3の融点は460℃であり、NaClは 801℃で融解します。各種の材料の融点を表に示します。結合の弱いアルカリ金属や1価のイオン性セラミックスの融点は低く、より強く結合している遷移金属や多価イオンの化合物の融点は高くなっています。また、非常に強く結合している共有性セラミックスはとても高い融点をもっています。有機物は融点や分解温度が低くなりますが、これは分子間にかかるファンデルワールス力が弱いことに起因しています。直鎖状の分子構造をもつ熱可塑性プラスチックスは加熱すると融解しますが、網目構造をもつ熱硬化性樹脂は加熱すると分解、もしくは劣化をおこします。熱可塑性プラスチックスの融点は分子の架橋や枝分かれによって高くなります。

表 各種材料の融点

材料融点(℃)
Al2O32050
安定化ZrO22500〜2600
SiC2300〜2500
WC2775
MgO2620
ムライト1850
NaCl801
SUS3041400〜1450
テフロン290
ポリエチレン120

コメント

タイトルとURLをコピーしました