今回はセラミックス材料の特性の一つ、強度について説明します。構造材料を選定する上で、材料強度は必須のパラメータとなります。品質を担保するためには信頼度の高いデータを多く取ることも必要です。
強度
一般的に強度(strength)という述語は金属とセラミックスのどちらにおいても不明確であり、特定の意味を表すには修飾語を必要とします。一口に強度と言っても、降伏強度(yield srtength)、引張り強度(tensile strength)、圧縮強度(compressive strength)、曲げ強度(flexural strength)、抗張力(ultimate strength)、破壊強度(fracture strength)、理論強度(theoretical strength)などが存在します。
強度特性には種々ありますが、しっかりと各種特性を理解し構造用材料として選定する際の指針としましょう。
理論強度
理論強度は、原子間の結合を切断し構造をばらばらにするのに必要な引張り強度と定義されています。引張り応力での理論強度は次の式で推定することができます。$$σ=(\frac{Eγ}{a_0})^{\frac{1}{2}}$$ここで、σは理論強度、Eは弾性率、a0は原子間距離、γは破壊の表面エネルギーになります。
セラミック材料の理論強度は一般的に弾性率の1/10〜1/5の値をとります。例えばAl2O3では平均弾性率が380 GPaであるため、理論強度の値は38〜76 GPaぐらいであると予想されます。しかしながら、セラミック材料では理論強度は基本的に達成されません。これは材料中に存在する微小な欠陥に応力の集中が起こり、理論強度値より著しく低い応力で破壊するからになります。
Al2O3とSiCについて、理論強度と繊維、多結晶体の引張り強度を表1に示します。Al2O3やSiCの多結晶体の破壊強度は理論強度のおよそ1/100に過ぎません。
表1 理論強度と実際の強度の比較
材料 | 弾性率 [GPa] | 理論強度 [GPa] | 繊維の強度 [GPa] | 多結晶体の強度[GPa] |
Al2O3 | 380 | 38 | 16 | 0.4 |
SiC | 440 | 44 | 21 | 0.7 |
セラミック材料の強度データ
種々のセラミック材料の強度データを表2に示します。この表を見ることで、各種セラミック材料の強度が大体どの程度であるかをざっくりと把握してみてください。
多くの製品応用で高温強度は室温強度よりも遥かに重要です。黒鉛を除くほとんど全てのセラミック材料は温度が高くなるにしたがって強度が減少します。
一般に強度は温度が高いほど減少し弾性率の低下に比例していますが、これは中程度の温度の挙動になります(〜1000℃)。高温では非弾性的な影響による、強度は急激に減少します。ほとんどのセラミックスでは粒界に化学的な二次組織が濃縮されており、高温ではこれが軟化してセラミックス全体の荷重負担能力が低下します。
表2 セラミック材料の室温強度
物質 | 曲げ強度(MPa) | 引張強度(MPa) |
Al2O3 | 350〜580 | 200〜310 |
アルミナ磁器 | 275〜350 | 172〜240 |
焼結BeO | 172〜275 | 90〜133 |
焼結安定化ZrO2 | 138〜240 | 138 |
焼結ムライト | 175 | 100 |
ホットプレスSi3N4 | 620〜965 | 350〜580 |
反応焼結Si3N4 | 200〜350 | 100〜200 |
熔融石英 | 110 | 69 |
ホットプレスTiC | 275〜450 | 240〜275 |
黒鉛 | 28 | 12 |
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