有機材料の分子構造〜その1〜

分子構造 セラミック
Sponsored Links

今回はセラミックス材料ではないですが有機材料の分子構造について説明します。現代の工学技術では有機材料は極めて重要ですので、それらの特性について理解することはセラミックスの研究にも必要になります。

有機材料のほとんどは分子から成っていて、それぞれの分子の原子は共有結合によって強く結合しています。外側の原子殻はすべて満たされているため、それぞれの分子は安定で他の分子と結合する強い力は持っていません。有機物の分子は通常は非金属元素と水素から成り、炭化水素は炭素と水素でできています。

炭化水素

炭化水素とその誘導体は工業的に最も重要な有機物で、それらのいくつかを図1に示します。原子を結ぶ直線は電子対から成る共有結合を表しています。C-C, C-H及びC-Cl間の結合エネルギーはそれぞれ~83,~99,~81 kcal/molになります。 炭素の二重結合 C=Cは ~146 kcal/mol のエネルギーを持っています。

二重結合をもたないパラフィン系飽和炭化水素はCnH2n+2の一般式を持ち、メタンでは n = 1, エタンではn=2となっています。n が 15 以下のパラフィン系炭化水素は室温で気体もしくは液体で燃料として使われています。分子が大きくなるほど融点が高くなり、約30個の炭素原子を含むパラフィン系炭化水素は室温でかなり硬い材料となります。

炭素の二重結合や三重結合を含む不飽和炭化水素は適当な条件下で重合して、大きな飽和炭化水素をつくります。

                    図1 炭化水素の構造

付加重合

エチレン、塩化ビニル、四ふっ化エチレン、スチレン、メタアクリル酸メチルのモノマーはいずれも二重結合を含む二官能性化合物です。炭素の二重結合をもつモノマーを熱、圧力、光、あるいは触媒を使って重合させると、長い鎖状の高分子化合物すなわちポリマー(polymer) が生成します。付加重合(addition polymerization) で放出されるエネルギーは反応の開始に必要なエネルギーよりも大きくなります。塩化ビニルモノマーの付加重合でポリ塩化ビニルが生成する反応を以下に示します。

                     図2 付加重合

より一般的には付加重合は次式で表されます。$$nA→(−A−)_n$$

分子内に2個以上の二重結合を含む化合物の付加重合では、1個の二重結合だけが切断して直鎖状の分子が生成します(例えばブタジエンの付加重合によるゴムの生成など)。

2種類以上の異なるモノマーから成る混合物の付加重合を共重合(copolymerization)と呼び、性質の異なる重合体が得られます。

$$nA+mB→(熱,圧力等)→(−A_nB_m−)_n$$

付加重合で得られる高分子は一般に熱可塑性で、熱を加えて軟かくした材料を射出成形などの方法で複雑な形状に成形することができます。熱可塑性高分子はリサイクルが可能なのがメリットでもあります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました