電気化学セル

電気化学
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電気化学は工業の分野で多く使われながらも、非常に広い知識を必要とする分野であるため、電気化学を専門としていない人の中には学ぶことが難しいと考えている人も多いのではないでしょうか。

今回は、電気化学測定に必要な用語「電気化学セル」について説明していきます。電気化学分野の研究は、理論的研究を除けば、ほとんど電気化学測定に基づいたものですので、電気化学を学ぶために電気化学測定を理解していくことが重要になります。

ガルバニ電池と電気分解

電気化学反応は、普通の化学反応とは異なり電流と電位差を伴う化学反応です。ある電気化学反応が自発的に進行すると電流を発生するため、その電流をいろいろ有用な仕事に使うことができます。これは電池と呼ばれる容器の中で起こる反応であって、容器の中にある物質エネルギーを電気エネルギーに変換します。この電池をガルバニ電池 (galvanic cell)といいます。

一方、ある電気化学反応では、電流を流すことによって反応を進行させ、通常の化学反応では発生しない物質を容易に生成させることができます。これは電気エネルギーを使って物質を変化させるプロセスであり、電気分解(electrolysis)といわれます。また、電気分解を行なう容器を電解セルまたは電解槽(electrolytic cell)といいます。

そして、ガルバニ電池と電解セルをあわせて電気化学セル(electrochemical cell)といいます。電気化学測定では、対象とする電気化学セルに印加する信号として、主に電流あるいは電圧の一方を制御して加え、他方を測定し、その測定結果の解析から様々な物理量を求めます。さらに、電流、電圧でけではなく、熱、電磁波、磁場、圧力などの力学的エネルギーなどを入力信号あるいは出力信号として用いる測定法も多数存在します。

電気化学セル

電気化学測定において対象にするのは先ほど説明した電気化学セルと呼ばれるもので、容器の中のイオン伝導体(ion conductor)に、少なくとも2個の電子伝導体 (electron conductor)を挿入したものになります。

この電子伝導体は通常、電極(electrode)と呼ばれ、電子が電気を伝える物質となっており、金属や黒鉛などの材料が代表的なものになります。また、イオン伝導体はイオンが電気を伝える電解質溶液(electrolyte solution) だったり、燃料電池で使用されるような固体電解質などのことをいいます。物質の電気伝導性については以下に分類して説明します。

物質を電気伝導性で分類すると、超伝導体、電気伝導体、絶縁体にわかれます。

超伝導体

超伝導体は、ある温度以下で電気抵抗がゼロになる物質のことをいいます。最もメジャーなものはニオブなどですが、身近なアルミニウム、鉛、スズといった金属も超伝導の性質を持っています。しかし、通常10K以下といった極めて低温での性質の発現になるため、普段その性質をみることはありません。未だ開発段階ですが、リニアモーターカーなどが超伝導を利用した製品になります。

電気伝導体

電気伝導体は、電子伝導体、イオン伝導体、混合伝導体の3種類存在します。

電子伝導体は、電荷担体として自由電子が電気を運ぶ物質であり、金属、黒鉛、半導体、電子伝導性ポリマー(有機金属)などがあります。

電子伝導体として近年開発が最も進んでいるのはおそらく半導体だと思います。半導体には真性半導体、n-型半導体、p-型半導体が存在します。それぞれ電気の流れ方に違いがあり、真性半導体では熱的励起により伝導帯に生じた電子と価電子帯にその抜け穴である正孔が発生し、これらが電荷担体となって電流が流れます。n-型半導体ではドナー準位から伝導帯に励起された電子が担体になり、p-型半導体では電子が価電子帯から励起されてアクセプター準位にトラップされ、荷電子帯に生じた正孔が担体になります。

イオン伝導体は、電荷担体としてイオンが電気を運ぶ物質であり、電解質溶液、溶融塩、イオン液体、固体イオン伝導体(固体電解質)、イオン交換膜などがあります。固体電解質という呼び名は一般的になっていますが、塩化ナトリウムのような固体の電解質ではなく、固体時にイオンを伝導させる物質のことを言います。固体電解質はセラミック材料がよく使われ、SOFCで使用されるようなイットリア安定化ジルコニアなどがあります。

混合伝導体は、電子伝導とイオン伝導の両者によって電気伝導が起こる物質のことをいいます。陽イオンと自由電子を含む高温の気体であるプラズマや、液体アンモニアに金属ナトリウムを溶解した溶液などがあります。近年開発されている電池などでは、電解質に混合伝導体を利用しているものもあります。

絶縁体

絶縁体は名称通り電気を通さない物質であり、磁器、プラスチック、ガラス、ゴム、気体などがそこに属します。絶縁体とはいいますが、実際には電気伝導体と明確な区別はなく、導電率の値で大まかに分類されます。例えば、磁器であれば$$10^{-14} S/m$$ガラスであれば$$10^{-12} S/m$$の導電率を示します。

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