リチウムイオン電池の正極材料〜LiNiMn系及びLiNiMnCo系材料〜

電気化学
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今回は、リチウムイオン電池の正極材料としてLiCoO2, LiNiO2以外の層状岩塩型構造の固溶体材料について紹介します。これら固溶体材料は未だ解明されていないところも多くありますが、LiCoO2, LiNiO2よりも有利な特性も多く、実用化が非常に期待されています。

層状岩塩型の固溶体材料

https://konju-ceramic.com/lithium-cobalt-oxide/https://konju-ceramic.com/lithium-nickel-oxide/で説明したように、リチウムイオン電池の正極活物質にはLiCoO2やLiNiO2をベースとした様々な固溶体化合物も検討されていますが、その中でも近年LiNi0.5Mn0.5O2, LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2などが大きな注目を集めはじめています。

LiNiMn系材料

LiNi0.5Mn0.5O2は2.5〜4.3Vの電位範囲で150 mAh/gという高容量を持っており、コストの高いコバルトを使用することもないためLiCoO2に代わる正極材料として非常に有望です。また、LiNiO2に比べて熱的安定性が高いという利点からその代替材としても期待されています。この材料における酸化還元反応はニッケルにより担われ(Ni2+/ Ni4+)、Mnは4価のままで存在します。このことからMO6八面体サイトで不安定なMnとなることがなく結晶構造が安定であり、高温でのMnの溶出が少ないことが特徴的です。また、放射光や中性子、磁気測定を用いた構造解析が盛んに行われており、リチウム層とニッケル層にそれぞれニッケルとリチウムが混入し合っていることも明らかとなっています。このような特異な挙動が影響して、同じニッケルの酸化還元反応が行われるLiNiO2とは充放電特性が異なっており、詳細な分析が進められています。

LiNiMnCo系材料

LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2はCoの含有量がLiCoO2に比べて1/3であり、コスト面で有利になっています。また、カットオフ電位を4.6Vにすることで200mAh/gという高容量での充放電サイクルが可能でありながら、LiNiO2と比較して高い熱安定性を持っています。LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2は二次元層状構造であり、3d遷移金属のサイトからなる三角格子点に規則正しく、ニッケルイオン、マンガンイオン、コバルトイオンが配置している構造をとっています。LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2中のニッケル、マンガン、コバルトの酸化数はそれぞれ+2, +4, +3価であり、Ni2+/Ni4+及びCo3+/Co4+の酸化還元反応によって充放電反応が行われ、マンガンの価数変化はありません。そのため、この系においてもマンガンと酸素の結合は安定であり、高温におけるマンガンの溶出は少なくなっています。また、コバルトイオンによる置換はLiNi0.5Mn0.5O2において見られるリチウムイオンとニッケルイオンの間の交換を抑制する効果があり、層間の乱れを改善します。

LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2の充放電過程では、リチウムイオン脱離量が2/3までは主にニッケルイオンが酸化還元反応に寄与していますが、2/3を超えるとコバルトイオンの寄与になっています。また、リチウムイオン脱離量が2/3までは格子定数の変化がありながら格子体積がほとんど変化しないため、この範囲での充放電では非常にサイクル特性がよくなっています。

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