セラミックスの焼結理論〜気相焼結〜

気相焼結 セラミック
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今回は、セラミックスの焼結理論とともに気相焼結について説明します。焼成工程はセラミック粉末の成形体を強度の高い焼成体に変える工程で、実用性を高める非常に重要な工程です。多孔性の焼結体もありますが、緻密体を作成する一般的な方法です。

焼結理論

セラミック材料の粉末成形体は焼成することにより緻密化(densification)します。これを一般的には焼結(sintering)と呼んでいます。元々は液相を生成する温度よりも低温による固相反応によって結合する現象のことを指していましたが、今では一般的に気相焼結、液相焼結、固相焼結すべての現象を指しています。焼結によって気孔の消滅及び成形体の収縮、隣接粒子間の強い結合や粒成長が起こりますが、焼結が進んでいくには次の条件が満たされなければなりません。

  1. 物質輸送の機構が存在する。
  2. 物質輸送の活性化とそれを維持するエネルギー源が存在する。

焼結における主な輸送機構は拡散と粘性流動になります。粒子同士の接触や表面張力による自由エネルギーの低下が焼結の駆動力となっています。

表に示すように焼結はさまざまな機構で進行します。それぞれの機構は単独もしくは他の機構と組み合わさって緻密化が進行します。

表 焼結機構と駆動力

焼結の様式物質移動機構駆動力
気相焼結蒸発-凝縮機構蒸気圧の差
固相焼結拡散機構自由エネルギ、化学ポテンシャル
液相焼結粘性流動機構、拡散機構毛管圧力、表面張力
反応性液相焼結粘性流動機構、溶解析出機構毛管圧力、表面張力

セラミック材料は数千年前から焼結によってつくられてきましたが、焼結現象を科学的に検討するようになったのはごく最近になります。焼結度合いの評価方法としては、密度や収縮率を時間の関数としてプロットしたり、焼結中の微構造を走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡などで観察することなどがあります。

気相焼結

焼結物質が気化し気体となってから凝固する焼結形態を気相焼結 (vapor-phase sintering) といいます。焼結の駆動力は表面曲率の関数である蒸気圧の差になります。正の曲率を持つ蒸気圧の高い粒子の表面から負の曲率をもつ蒸気圧が低い粒子の接触部に向かって物質移動が起こります。粒子が小さいほど正の曲率が大きく、蒸気輸送の駆動力が大きくなります。蒸気圧は粒子の大きさや表面曲率のによって大きな影響を受けます。蒸気相による物質輸送は気孔の形状を変化させ、隣接粒子間に結合を形成して材料の強度を増加させ開気孔による透過性を減少させます。しかしながら、それによる成形体の収縮、緻密化は起こらないため、緻密化を進行させるには気孔を外部表面に移動させる別の機構がなくてはなりません。そのため、緻密体を作製するには固相焼結や液相焼結を行う必要があります。

図 気相焼結の模式図


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