セラミックの磁気的性質

フェライト セラミック
Sponsored Links

今回はセラミックの磁気的脂質について説明します。磁性を持ったセラミックスは現代の工学技術で必要不可欠な役割を持っており、永久磁石、コンピュータのメモリ、ラジオ、テレビ、マイクロ波通信用の各種回路部品などに利用されています。

磁気的性質

物質固有の磁気的性質は電子構造と結晶構造によって決まります。パウリの排他原理から考えると、ある一つの電子軌道を占有できる電子は2個に限られており、しかもそれらは互いに反対のスピンをもっていなければなりません。もしその電子軌道が2個の電子で占められている場合には、相反するスピンによって磁気モーメントが打ち消されてしまいますが、遷移元素、希土類元素、アクチノイド元素などを含む結晶ではある電子軌道が半分だけ満たされており、磁気モーメントを生じます。結晶構造中のそれぞれのイオンが磁気モーメントを持っていても、それらを囲むイオンによる反対の磁気モーメントで打ち消されてしまうこともあります。例えば、FeOでは一つの原子面
のFe2+イオンは全て同方向のスピンの電子を持っていますが、隣りの原子面のFe2+イオンは逆方向のスピンの電子を持っており磁気モーメントを打ち消しあっています。

フェライト

磁性をもつセラミック材料として代表的なものがフェライト(ferrite)です。フェライトは結晶構造によって3種類に分類されます。立方晶フェライトはスピネル構造かガーネット構造のどちらかで、六方晶フェライトはマグネトプランバイト構造、斜方晶フェライトはペロブスカイト構造になっています。これらのフェライトのすべては部分的に満たされたd電子殻と磁気モーメントをもつ遷移元素か、部分的に満たされたf電子殻と磁気モーメントをもつ希土類元素のどちらかを含んでいます。

六方晶フェライト(特にBa,Sr, ,Pbを含む)は大きい磁化率をもち、小型で安価であるといった特性から永久磁石として用いられています。戸棚の止め金具やメモ用紙のクリップなど家庭用の永久磁石のほとんどは六方晶フェライトが使われています。また、フェライト粉末を混入させたゴム磁石は冷蔵庫の密閉用止め金具として使われています。その他にも電気歯ブラシ、電気ナイフ、自動車用ワイパ一、暖房用送風機、空調機器、パワーウインドウ、シート調節装置、オープンカーの幌の収納器などのモーターに六方晶フェライト磁石が用いられています。また、フェライト永久磁石は他にもスピーカー、サイクロトロン粒子加速器、電力計などに使われています。

スピネルフェライトやガーネットフェライトは六方晶フェライトとは異なる性質を持ち、別の用途に利用されています。最も重要な利用例としてはコンピュータのデータメモリがあり、非常に高い磁気応答性を上手く利用しています。このような材料は二つの安定な磁化状態を持ち、一方から他方へと互いに切換えることができます。それぞれの安定な状態を数字の0と1とを表すことでデータの記憶が可能になり、それらのデータはスイッチを切替えて読み出すことができます。スイッチのサイクルタイムはおよそ5μ秒であり、非常に高速なデータ処理となっています。

希土類ガーネットのフェライトもデータの記録に使用されてきました。希土類ガーネットフェライトの薄膜(約5μm)を熱膨張係数が僅かに違う非磁性基板上につけたものがありますが、この材料は冷却中に熱収縮の差によって希土類ガーネット層の面に垂直方向に配向した磁化を生じ、互い違いに反対のスピンをもつ微視的な磁区に分離します。それらの磁区は偏光顕微鏡で泡のように見えるため泡磁区と呼ばれ、コンピュータの記憶素子として使うことができます。同様の泡磁区構造は斜方晶フェライトの薄い単結晶板でも得られており、バブルメモリーとして実用化されています。

Mg-Zn系、及びNi-Zn系のスピネルフェライトは高い透磁率と低損失性を持っており、モーター、ラジオ、テレビ、電話器、通信用干渉フィルター、高周波熔接器、海底通信装置など種々な機器に使われています。

磁性セラミックスの技術開発は近年発達しており、組成や製造条件を制御することによって広い範囲の磁気的性質を調整することができます。しかしながら、逆に組成や製造条件が正確でない場合は必要な性質を得ることはできないため、製造技術も非常に重要な課題となっています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました