セラミックの光学的性質〜蛍光と燐光、レーザー〜

蛍光と燐光、レーザー セラミック
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今回はセラミック材料の光学的性質の中で、蛍光と燐光、レーザーについて説明します。蛍光と燐光は蛍光灯やテレビ画面など身近なところで、レーザーは実験装置など工業的な分野で利用されています。セラミック材料の中で重要な応用技術ですので、しっかりと理解しておいてください。

蛍光と燐光

蛍光(fluorescence)と燐光(phosphorescence)とはある種のセラミックスで認められる重要な性質です。燐光は適当なエネルギー源によって励起された物質が可視あるいは近可視光を放出する現象で、励起放射の起こる過程が非常に短いものを蛍光、長いものを燐光と呼びます。それらの材料は蛍光灯、オシロスコープやテレビのスクリーン、複写器用ランプなどに使われています。

蛍光灯はガラス管の内壁にSbやMnをドープした蛍光体(Ca5(POF4)3(Cl,F), Sr5(PO4)3(Cl,F)など)を塗り、水銀蒸気とアルゴンを封入したものになります。蛍光灯に電圧を加えると放電を起こして水銀蒸気の波長2537Åの紫外線を生じ、これが蛍光体を励起して可視領域の幅広い発光を生じて光源となります。

オシロスコープやテレビではスクリーンを走査する電子線によって蛍光体が励起されます。蛍光体の減衰時間はカラーテレビでは1/10〜1/100 秒であり、レーダー用のものはこれよりもずっと長くなっています。カラーテレビでは三原色に相当する狭い波長領域の光を放射する蛍光体が必要であり、開発当時最も難しかったのが赤色の蛍光体でした。この赤色の蛍光体として昔はMnをドープした Zn3(PO4)2が使われていましたが、発光効率が低いので大きい電子線流を必要としていました。最近のテレビでは EuをドープしたYVO4や Y2O2Sが使われており、Eu の4f電子の遷移による蛍光を利用しているため、効率が圧倒的に向上しています。

複写器のランプにもセラミック蛍光体を塗布したものが使われています。MnをドープしたMgGa2O4は緑色の波長域に狭い幅の発光を生じ、Eu2+をドープしたピロリン酸ストロンチウム・マグネシウムは紫から青の領域で蛍光を発生します。

レーザー

レーザーという言葉はメジャーですが、実はレーザー(LASER)とは光の誘導放射による光増幅 (Light Amplification by the Stimulated Emission of Radiation)の頭文字になります。レーザー用のセラミック材料には、Cr3+をドープしたAl2O3(ルビーレーザー)、Nd3+をドープしたY3Al5O12(YAGレーザー)、及びNd3+を ドープしたガラス(ガラスレーザー)があります。これらレーザーは特定の波長を発光しますがその波長はドーパントの種類で決定します。Cr3+をドープしたルビーレーザーでは0.694 μm、Nd3+をドープしたレーザーでは1.06μmの波長となっています。

レーザー用のセラミック部品は通常は直径 0.3〜1.5cm、長さ5〜15cmの円柱であり、両端は平滑度λ/10(λ=0.59μm)、平行度が±5秒の精度に研磨してあります。この円柱は散乱による損失を避けるため可能な限り欠陥が少なく、ドーパントが均一に分布していることが必要です。タングステン−ヨウ素白熱電球や希ガス放電管で円柱を励起すると、ランプの出力の僅かな部分がドープしたイオンに吸収されて高エネルギー状態へ電子の遷移が起きます。それらの電子が始めのエネルギー状態にもどる際にドーパントに固有の単一波長の光の放射が生じ、円柱の両端面の鏡で光が反射されてコヒーレントな光となります。これが増幅されて強度を増し、鏡を取り去るとパルスとして放出されるのがパルスレーザーです。また、一方の端面に半透明鏡を使ってコヒーレントな光の一部を連続的に放出するものが連続レーザーになります。

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