原子の結合様式〜金属結合と共有結合〜

金属結合と共有結合 セラミック
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原子の結合には満たされていない最外殻の電子の状態が関係しています。https://konju-ceramic.com/electron-configuration/にて電子配置について説明したとおり、He, Ne, Ar, Kr, Xe 及び Rnは最外殻が満たされているため非常に安定で他の元素と容易には結合しません。満たされていない電子殻をもつ元素はこれほど安定ではなく、原子間で電子を共有や交換し、満たされた外殻をつくることで安定な結合状態になります。セラミック材料や金属材料はほとんど金属結合、共有結合、イオン結合といった結合様式になっています。

金属結合

名前から一目でわかるように金属における主な結合様式になります。金属結合(metallic bonding)は、荷電子が構造中の全ての原子によって共有されているので電子結合(electronic bonding)とも呼ばれます。負の電荷をもつ電子の相互の反発によって構造中における電子は均一に分布し、いかなる瞬間でも各原子は満たされた外殻の条件を満足するために十分な電子をもっています。そして、構造中のすべての原子核と共有電子雲との間の相互引力によって金属結合が生じます。純粋な金属では荷電子が均一に分布しており、全ての原子が同じ大きさをもつため最密充填構造をとるものが多くなります。立方最密充填構造は多くの滑り面をもち、機械的な力を受けるとそれらの面に沿って滑ることができます。立方最密充填構造をとる純粋な金属は非常に大きい延性を示し、破断するまでに40〜60%の伸びを生じます。一方で、合金では立方最密充填構造をとるものも多いのですが、合金に含まれている大きさの違う原子が滑りを阻害して延性を減少させます。また、金属は自由電子によって高い電気伝導と熱伝導を示します。

周期表の左側から中央部の元素の多くが金属結合をとります。NaやKなどのアルカリ金属元素は外殻の電子で結合しており、結合エネルギーや強度が小さく、融点が低くて安定ではありません。一方で、Cr, Fe. W などの遷移金属元素は内殻電子で結合しているため、強度が大きく融点も高くなり安定しています。

共有結合

二つ以上の原子が電子を共有してそれぞれが安定で満たされた電子殻をつくると、共有結合(covalent bonding)ができます。共有結合は金属結合やイオン結合とは違い、方向性をもっています。それぞれの共有結合は二つの原子核によって共有された電子対から成り、各電子の分布確率はダンベルに似た形状をもちます。

炭素原子から成るダイヤモンドが良い例になります。原子番号6の炭素は1s22s22p2の電子配置をもち、2s22p2電子のそれぞれは他の炭素原子の電子と軌道を共有して四面体型に共有結合したダイヤモンド構造をつくります。この構造では、それぞれの炭素原子は自分自身のもつ6個の電子と、隣接する4個の炭素原子と共有する電子と併せて10個の電子をもっており、各原子はNe原子の外殻と同じになり非常に安定な状態となります。ダイヤモンドは炭素原子が周期的に共有結合しており、高い硬度と高融点をもち、低温では電気伝導度が小さくなります。SiCはダイヤモンドに似た共有結合をもち同様の性質を示します。

共有結合性のセラミックスは一般に大きい硬度と強度、高い融点をもちますが、共有結合に必ず存在する性質ではありません。ほとんどの有機物が高い融点をもっていないことがこれを示しています。例えば炭化水素のメタンですが、構造はダイヤモンドと同じ四面体構造ですが、常温では気体の化合物になります。

共有結合性の化合物は最密充填しない構造をつくりますが、このことは密度や熱膨張などの性質に大きな影響を与えます。金属やイオン性のセラミックスの熱膨張は比較的大きくなりますが、共有結合性セラミックスの熱膨張は一般的に小さいものとなります。

共有結合は電気陰性度が似た原子の間で生じます。C, N, Si, Ge及びTeは電気陰性度の値が中位で共有性の構造をつくります。電気陰性度が大きく異なる原子の間では共有結合性の小さい化合物ができます。

共有結合性とそれによってつくられているセラミック材料の性質は次のようにまとめることができます。

  1. 電子の共有によって外殻が満たされて電気的に中性。
  2. 電気陰性度が似た原子でつくられている。
  3. 方向性のある結合。
  4. 最密充填構造でない三次元骨格構造をつくる。
  5. 一般的に高強度、高硬度、高融点。
  6. 熱膨張が小さい。

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