セラミックの電気的性質〜誘電体〜

誘電体 セラミック
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セラミック材料の中には誘電性を備えたものも多くあります。誘電性とは、材料を電場に置いたときに負の電荷と正の電荷がそれぞれ反対側に移動し、内部に電気双極子を生じる性質のことを言います。

誘電体

誘電率

一般的に誘電体とは、導電性よりも誘電性が高い物質のことをいい、直流に対しては絶縁体としてふるまいます。ですので絶縁体の一種だと考えてもらえれば大丈夫です。誘電体にとって最も重要な特性は、電場をかけたときに電気双極子を生じる誘電分極であり、誘電分極は電子分極、イオン分極、配向分極などに分類されます。分極度合いを決める分極率(polarizability)は電子分極、イオン分極及び配向分極の組み合わせから決まり、誘電率(dielectric constant)と密接な関係をもっています。代表的なセラミック材料と高分子材料の誘電率を表に示します。

表 各種材料の誘電率

物質誘電率
NaCl5.9
MgO9.6
BeO6.5
Al2O3 8.6〜10.6
TiO215〜170
雲母2.5〜7.3
磁器5.0
高鉛含有ガラス19
BaTiO3 1600
BaTiO3 +10%CaZrO3 +1%MgZrO3 5000
BaTiO3 +10%CaZrO3 +10%SrTiO3 9500
ゴム2.0〜3.5
フェノール樹脂7.5

誘電強度

もう一つ重要な誘電的性質として、誘電強度(dielectric strength)があります。絶縁耐力とも言われますが、これは材料が破壊されることなくどれだけ電場に耐えられるか、という能力になります。測定条件、試料の形状によって変化する可能性が高く、この値を実験的に正確に求めることは難しくなっています。一般的には、チタン酸化合物では4000〜7500 V/mm、雲母では5000〜220000V/mm、フェノール樹脂〜約80000 V/mm と言われていますが、これは理想的な条件下での数値ですので、実際にはここから安全率をみて使用することが必要です。また、セラミック材料の場合は単結晶の方が多結晶に比べて一般的に高い誘電強度をもつと言われています。有機材料は誘電強度も比較的高くなっており、絶縁体として広く使われています。

誘電材料の使用例としては最も有名なものはコンデンサーです。コンデンサーに蓄えられる電気量は極板の間に置かれた物質の誘電率に依存します。例えば、その誘電率が10であるならば、真空のコンデンサーに比べて10 倍の電荷を蓄えることができるということになります。誘電率は一般的に比誘電率として考えられ、真空の誘電率との比となります。

BaTiO3はコンデンサーを小型化するのに貢献した画期的な材料でした。一般に、誘電的性質は電場の強さと温度によって変化します。そのため、純粋な BaTiO3だけでは様々な使用用途のコンデンサーに適用することはできませんが、Ba2+の一部をPb2+, Sr2+, Ca2+, Cd2+などで、Ti2+の一部をZr4+, Ce4+, Th4+, Sn4+, Hf4+などで置換することで、広い範囲の組成をもつ固溶体を作ることができ、目的に応じて必要な性質を備えた誘電体を選ぶことができます。

この小型且つ高誘電率のBaTiO3系材料はエレクトロニクスの進歩に重要な役割を果たしました。現在のトランジスタラジオには直径1cm 程度のBaTiO3系のコンデンサーが数個入っていますが、BaTiO3登場前に作ろうとすると10倍以上のサイズのコンデンサーとなってしまいます。BaTiO3系材料は当時の材料の10倍以上の誘電率を持っていたのです。

強誘電性

セラミック材料の中には強誘電性を示すものもあります。強誘電性とは、電場がかかっていなくても電気双極子が整列した状態になる性質のことを言います。先ほど説明したようなBaTiO3も強誘電体の一つです。

強誘電性は極性を持った分子が自発的に向きを整えることで生じます。BaTiO3ではその配列はペロブスカイト構造中の八面体サイトを占める Ti4+が関係しています。BaTiO3ではBa2+の半径が大きいので、Ti4+はハ面体サイトにとっては狭すぎて中心からずれた位置に入る傾向があり、その結果として電気双極子が生じています。また、BaTiO3の強誘電性はキュリー温度120°C以下の安定な正方晶についてだけみられるもので、120〜1460°Cの立方晶、1460〜1618°Cの六方晶では強誘電性を示しません。強誘電材料としては、この他に PbTiO3, NaTaO3, LiTaO3, WO3などがあり、それぞれ異なるキュリー温度を持っています。PbTiO3のキュリー温度は480°Cですので、BaTiO3よりも高い温度で使うことができます。

強誘電材料は先ほど説明したように非等方性で結晶学的方位によって異なる電気的性質を持ち、電圧を印加すると機械的な歪を生じます。この圧電的性質を利用して、BaTiO3やPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの強誘電セラミックスが超音波機器やマイクロホン、蓄音機のピックアップ、加速度計、歪ゲージなど、広い分野で使用されています。

また、強誘電セラミックスはバンドパスフィルターとして市販されています。バンドパスフィルターは強誘電材料の共振を利用して特定の周波数の信号だけを受信もしくは透過させて、他の周波数の信号や雑音を分離・除去することができます。

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