セラミック原料の整粒方法

篩 セラミック
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ファインセラミックスの機械的性質は、焼結体の結晶粒、粒界などの微構造や気孔率だけでなく、クラックや不純物などの欠陥や残留応力なども関係しています。微構造や粒界は一次粒子である原料粉末自体に強い影響を受けますが、それと同時にその粒子の集合体や分散性も重要になってきます。そのため、品質の高い製品を製造するために要求された粒度分布を要求通りに得る必要があります。今回は原料粉末の整粒方法の中で代表的なものを説明します。

整粒方法

  • 篩分け(ふるいわけ)
  • ボールミル粉砕
  • 仮焼

篩分け(ふるいわけ)

篩分けは分級方法としては簡易的ながら非常に有効な手段です。規定の穴をもつ篩を穴の小さなものから順に重ね、粉末を入れて振動を加えることで、それぞれの篩の穴に対応した粒径の粉末に分級されます。

篩は一般的に1インチあたりの穴の数で表されます。例えば40メッシュであれば1インチあたり40個、200メッシュであれば1インチあたり200個の等間隔の穴を持っていることになります。以下に標準篩のメッシュ数と穴の大きさをmmとして示します。

表 標準篩の寸法(mm)

メッシュ数篩の開口[mm]
44.76
63.36
102.00
121.68
161.19
200.84
400.42
800.177
1200.125
1700.088
2000.074
2300.063
2700.053
3250.044
4000.037

セラミックスの原料は篩の規格で供給されることがよくあります。例えば、200メッシュの粉末というと全て74μm以下の粒子からなり、−100+150メッシュと表示された粉末は100メッシュの篩は通り150メッシュの篩は通らない粉末ということになります。

篩分けは乾式でも湿式でも可能です。乾式の篩分けは大きい粒子に対して効果的で、鉱業やセラミック工業の各分野で広く使われています。しかしながら、325メッシュ以下の微細な粒子は凝集体を形成したり篩の目を詰まらせたりすることがあるため注意が必要です。蒸留水や他の流体中に粉末を分散させた懸濁液をしようする湿式の篩分けは微細粒子の分級に有効で、流動性が高い場合には500メッシュまで容易に篩分けすることができます。この方法は、微細な粒子から成る粉末の中に許容限度以上に大きい粒子が混入していないことを保証する必要がある場合に有効です。大きすぎる粒子が混在すると最終製品に重大な欠陥を与える可能性があるため、湿式の篩分けは工程内の品質管理に使用されることが多いです。

非常に有効な篩分けですが、注意点もいくつかあります。例えば、網目の歪みや破れが粒子の通過に大きく影響を与えるため、篩の整備が重要になります。特に325メッシュよりも細かい篩は非常に細い線で構成されているため破損しやすくなっています。また、粉末の凝集や固まりにも注意が必要です。篩の網目に詰まりがあると篩分けの効率が落ちるため、定期的に確認が必要です。

ボールミル粉砕

ボールミルは最も広く使われている粉砕機の一つで、原料粉末を粉砕媒体(ジルコニアの石など)とともに円筒形の容器に入れ、軸を水平にして容器を回転させることで粉砕媒体を容器内で滝のように落下させます。原料粉末は粉砕媒体の間や容器壁との間で効率的に粉砕され、次第に小さな粒子となります。

粉砕速度は粉砕媒体と粒子の比重、硬度及び大きさで決まり、粉砕媒体の比重が大きいほど粉砕能率は向上する。一般に使われる粉砕媒体を比重の大きい順に並べると、WC、鋼、ジルコニア、アルミナ、シリカとなっています。感覚的にはジルコニアボールが使われることが最も多いように感じます。

ボールミル粉砕の問題点の一つとして、不純物の混入があります。例えば、磁器やシリカの粉砕媒体を使用してアルミナを粉砕すると毎時約0.1%の不純物が混入します。不純物の混入は焼結体の強度やクリープ性を大きく低下させるため、品質の高い製品を作る上では大きなかだいのとなっています。

対策として、ボールミルの内張りや粉砕媒体を選択することで不純物の混入を少なくすることができます。ポリウレタンやゴムなどはボールミルの内張りや媒体の被覆によく使われ、優れた耐摩耗性を示しますが、有機溶剤には使用できないというデメリットもあります。また、非常に硬度の高いWCは摩耗が遅いため粉砕媒体としてよく使用されます。さらに、ほんの僅かな不純物を嫌う場合は原料粉末と同じ組成の粉砕媒体を使用することもおすすめします。

ボールミル粉砕は乾式、湿式のどちらでも行うことができます。乾式法は粉砕した粉末を液体から分離する必要がない点がメリットですが、容器の隅に粉末が固まって粉砕が行われないという不利な面もあります。流動性を高めるためステアリン酸などの乾式潤滑剤を添加する場合もあります。また、湿度が高いときなどはボールミルを加熱することも効果的です。湿式法は、粉末、液体、粉砕媒体の比率が適正な場合に非常に効率が良くなります。この最適比率は実験的に決める必要があり、物質によって異なります。ボールミル粉砕は平均粒径を5μm以下に容易に低下させることができますが、一般に粒度分布は広くなります。

ボールミルで粉砕することにより焼結しやすい非常に活性な粉末が得られます。これは、粉末粒子の表面状態が変化して粒子内部の歪エネルギーが増加するからであると考えられています。

仮焼

セラミック原料として最適な粒度分布を得るために、仮焼という熱処理が広く用いられています。これは高温の熱処理でその条件も粉体それぞれによって異なるため、予め実験により最適値を決定しておく必要があります。具体的には、バイヤー法で所要の相や粒径をもつアルミナ粉末を合成する際にも用いられます。

仮焼は脱水にもよく利用されます。二水石膏$$CaSO_4・2H_2O$$を適当な温度で熱処理すると部分的に脱水して半水石膏$$CaSO_4・1/2H_2O$$が得られます。また、仮焼温度を高くすると無水石膏$$CaSO_4$$となり、水和性に変化を与えることができます。

仮焼の応用の一つに粒子の粗粒化があります。充填性の悪い非常に微細な粉末を仮焼することにより、隣り合った粒子がゆるく結合して充填性の優れた粉末を得ることができます。

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